理事長と会長にインタビューを行いました
八王子市の歯医者「市川矯正歯科医院」の村松理事長と市川会長のインタビューをご覧ください。矯正治療について、医院のこれからについて、また趣味のなど、二人の熱い想いをご紹介します。
まず、矯正の分野を選ばれた理由をお聞かせください。
理事長 村松裕之
僕は、中学生の頃に母親に連れられて矯正医院に行ったのがキッカケです。その時期にやった治療が、うまくいかなかったんです。それも治療自体の難しさに加え、当時の技術など、いろいろな理由があったと思うんですけどね。そういったことが重なって、うまくいかなかったんです。
それから大学に入って歯科のことを勉強するにつれ、「矯正」以外で自分の治療を進めることはできない、ということがわかったんです。さらに矯正だけでなく、手術もしなくては治らないということにも気づきました。
そういった自分の経験から、歯科の分野において難しい治療とは、矯正なしで対応することができないとわかり、矯正医を目指したという背景があります。
会長 市川和博
今から40数年前、矯正歯科は大学院の専門コースに入らないと学べない分野でした。当時は矯正歯科についての情報が全くない状況でしたが、大学6年生の臨床実習の際に進路を決めました。これは今から考えると、けっこう早いタイミングでの決断だったと思います。
当時の日本では、咬合学の創生期でした。アメリカからはじめて咬合学が伝わってきたもののテキストがなく、アメリカに行った方から伝え聞くという状況でした。
私はたまたまそういう先生と知り合い、「咬合学とは削って、被せてということの為にあるのではないんだな」と理解しました。その頃までの咬合というのは、入れ歯でどうにかしたりという話だったのです。しかしそれに対し、「身体全体からつくられるお口の機能」と感じました。
矯正とは将来的に考えて面白い治療だな、と感じました。そういう理由で、矯正を選んだのです。
では次に、多数の症例を解決できたのはなぜだと考えられますか?
理事長 村松裕之
矯正というのは優しく捉えることもできるし、とても難しい分野とも捉えられます。今、この「矯正」というものの歴史が「100年」とかいう単位でつくられている中で、「こういうことができる」などという矯正の可能性が広がってきました。それは、矯正だけに留まらないことですけどね。
また歯科の中でも様々な経験や情報が蓄積されてきて、「この人にはこういう治療を」「こういう要望があったけど、それをこういう風に解決しよう」など、一人ひとりについて丁寧に考える。そして治療計画をはじめ、治療中のいろいろな説明や、治療が終わったときの効果についての説明など、忙しい中でもしっかりと時間をつくって説明する。
そういう、本当に当たり前のことの積み重ねしかないと思っていますけどね。
会長 市川和博
当院が開業した1977年当時、東京区内にはすでに6軒の矯正を専門とした医院がありましたが、その頃のニーズに対しては過剰でした。そこで諸先輩方への遠慮と合わせ、地域医療を肌で感じたいという想いから、八王子市の住宅街に医院を開設したのです。区外ではじめての矯正専門医院となるため、保健所や学校現場、行政ほか、市民にも「矯正歯科」について理解してもらうことからはじまりました。
その後1979年には、児童・生徒に対する口腔衛生指導や咬合育成の必要性を広めるよう利便性の良い駅に近いテナントに移転し、小児歯科医院も併設しました。この間に矯正歯科、小児歯科の科目標榜の公認および、唇顎口蓋裂、顎変形症にかぎる育成・更生医療機関指定を受け、医療保険制度の適用もできるように環境整備を行ってきました。
さらに都立八王子病院の嘱託医として、週1回外来にて形成外科医とともに、先天性疾患患者の診察を行っています。
そして、生涯にわたる一口腔単位の管理を実現するために、小児歯科、一般歯科、矯正歯科、口腔外科の連携の充実を図る体制を整えるため、医院の移転による新たな体制づくりを重ねていきました。
こうして常に患者さんの立場に立った体制づくりを心がける中、リコールの患者さんの数がどんどん増えてきました。積み重ねられたたくさんの症例は後から着いてきたものです。とにかく一人ひとりの患者さんと丁寧に向き合ってきたことが、実績につながっていったのだと思いますね。
では、患者さんの満足度向上のための取り組みを教えてください。
理事長 村松裕之
患者さんが聞きたいこと、というのがあると思うんですよね。それをなるべく先取りすること。おそらくこういうことが困るだろうな、という点を、なるべく早い時期に伝えてあげる。
また治療経過を断面、断面で見てみると、治療が右往左往しているように見えることが往々にしてあるんですよ。そういったとき、その患者さんに行った1ヶ月前の治療の後、どういう様子であったかという会話をすることなども大事にしていますね。そういった会話も治療につながるよう、心がけています。
後は治療がどういう効果を生み、どうしてそうなることがいいのか、ということをしっかりとご説明する。しっかりと治療をした結果がこういうことになる、ということを理解していただく。そういったことをわかっていただくことが、患者さんの満足につながると考えていますね。
会長 市川和博
患者さんの満足度は、患者さん一人ひとりによって違います。今までは、医療者側だけの裁量で「これがいいだろう」とやってきたところがありますが、矯正治療が一般的になってきた今では患者さんはしっかりと比較をするし、たとえて言うなら「車を買う」といったことに近い認識になってきたのではないでしょうか。
そうしますと、「とにかくよくしてほしい」という単純な要望に加えて、いろいろな要素が増えてきます。医院の快適な環境やスタッフの質などについて様々なご要望が増え、医院としてはどこに照準を合わせるのかを考えなくてはなりません。これはとても難しい問題です。
その結果、当院は患者さんの様々なご要望に応えられるよう、どんどんスタンダードが変わってきています。昔の当院はとても個性的だったと思いますが、それでも患者さんは受け入れてくれていました。しかし、時代は変わりますので、それに対応することも必要なことだと考えています。
今後目指す医院の方向性を教えてください。
理事長 村松裕之
これは当院にかぎらず、どこにおいても課題であると思いますが、経営者と働く人たちが、みんな同じ価値観を持ち、同じ方向を向いて患者さんに対応をしていくということが大切だと思っています。
それから誰でも、自分一人ではできないことがたくさんあるので、技術をみんな平均化できるよう取り組んでいく。それは単にテクニックの問題ではなく、会話や患者さんに対する接し方などの向上などもあります。この実現を目指しています。
会長 市川和博
近年、患者さんの価値観や評価などがあまりにもはっきり出てきていて、それを捉えながらどうしていくかというのは難しいことです。ただ一つ言えるのは、この40年でつくり上げたものを、これからも同じように目指してやっていきたいということです。
それは「予防」です。一昔前であれば、歯並びがよくなればそれで満足していただけました。つくり上げたものが崩れないように、ちゃんとしましょうね、ということで済んでいたのです。
大体、矯正をした患者さんは、虫歯にはあまりなりません。これからの課題は歯周病だと考えています。これについては、学会のほうでも盛んに取り組んでいます。
日本では、「かかりつけの歯科医」というシステムや概念が、なかなか根着きません。歯医者には痛くなってから行くところというのが変わらぬ現状です。
痛くなければ行かない。歯周病は加齢現象も伴い環境も悪化し、症状も悪化して行きます。しかしながら自覚症状が少ないため、しっかりとしたメインテナンスを継続して受けている患者さんはほとんどいないのです。
それが今、私が抱えている課題であり、矯正治療における一番の価値、やりがいであると言えます。歯を並べるということは誰がやってもできる。今はそういう時代になりました。でも患者さんの生涯の健康を考えるならば、予防診療のバランスには咬み合わせ、咬合を再構成する矯正治療それと同等のウエイトが必要でしょう。
質を問わなければ誰でも矯正治療はできるし、看板も出せます。しかし当院がすべき本当に重要なことがなにかを考えれば、予防の重視にほかなりません。
患者さんへのメッセージをお願いします。
理事長 村松裕之
患者さんには、望んでいるもの、たとえば矯正してこうなりたい、などイメージされるものを詳しく話してもらいたいですね。
患者さんは時間や仕事上の制約など、様々な問題がある中で矯正治療を受けられていると思いますので、そういうことに対してのご要望にはしっかりと応えたいと考えています。その結果、人生をより楽しく過ごしていただけると、とてもいいなと思っています。
会長 市川和博
私たちは歯並びや噛みあわせを治すことで、顎やお口の様々な機能が改善されることを目指しています。皆さんとの協働により得られた良い結果は、必ず個性を失わない美しさとして表れます。そしてそれはきっと皆さんの生涯のプライドとなると考えています。
最後に、趣味の話を聞かせてください。
理事長 村松裕之
僕は小さい頃からスキーをやっていたんですが、ろくにうまくならなかったんです(笑) 自己満足でやっている感じだったからでしょうか。そこで、あるとき決心をしてスキースクールに通い、一応1級を取ったんです。
でも1級なんてたいしたことではなくて、やっぱりスキーは奥が深いと感じました。うまくなろうと思ったら、いくらでも壁があるんですよ。それでもずっと続けていると、最後に立ちはだかるのはモーグルですね。けっこうチャレンジしているんですが、なかなかうまくならなくて。結構滑れるようになった気ではいますが、また新しい壁が立ちはだかるんですよね(笑)。
あとは写真ですね。今はデジカメをやめて、フィルムカメラに戻ったんですよ。昔の古いカメラに変えてね。デジカメって、わりとたくさん撮った中からいいものを選ぶという感じなんですけど、フィルムカメラは1枚1枚を丁寧に考えて撮る、というのがいいなと思うんですよ。
ふだんの仕事ではデジタルカメラで撮影しているので、せめて趣味くらいはゆっくりと撮ろうかなと思いまして。カメラはけっこう楽しくて、その世界に没頭できますね。
会長 市川和博
子どもの頃から山の世界に親しみ、青年期にはヒマラヤなどに行きました。そしてここ20年はヨーロッパのアルプスで毎年クライミングを楽しんでいます。
あとは八王子の地にクラッシック音楽の風を吹かせたい想いで、3年に1度の国際チェロ・コンクール開催の運営に携わってきました。また、市内の小・中学校やチャペルでの音楽会を開催するNPO法人を主催しています。ビッグ・バンド・ジャズでは学生時代の音楽仲間が全国から集まって、年に2度のステージでバリトンサックスを吹いて楽しんでいます。